西国第一番
那智山 青岸渡寺

(なちさん せいがんとじ)
 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山

 
JR紀勢本線「紀伊勝浦」駅下車、駅前から熊野交通バス「神社お寺前駐車場(那智山)」行きに乗車する。バスは途中「那智駅」を経由するのでここからバスに乗車してもよい。終点の「神社お寺前駐車場(那智山)」で下車する(バス乗車時間は約30分間、運賃は往復割引1000円)。青岸渡寺への参道の石段はバス停から徒歩すぐ。

宗派:天台宗

本尊:如意輪観世音菩薩

開基:裸形(らぎょう)上人


 仁徳天皇の代(300年代)にインドから熊野灘の浜に漂着した裸形上人が、那智山に籠もり、那智の大滝にうたれること千日、その修行中に滝壺の中に黄金色に輝く丈八寸の観音仏の出現を見たという。
 裸形上人は小堂を建て、授かった黄金の観音仏を祀ったのが当寺の創始とされている。
 その後、推古天皇の代に大和からきた僧、生仏上人が玉椿の大木で如意輪観音像を刻み、この中に黄金の観音仏を胎内仏
として納めたという。

 「本堂」は推古天皇の時代に創建されたといわれており、現在までに数回改築されているらしい。

 現存の本堂は、織田信長の軍勢によって焼き討ちされた後、天正18年(1590年)に豊臣秀吉が弟秀長に再建させたものであるといわれており、大正13年(1924年)に修理されているという。

 青岸渡寺の殆どの堂宇は新しく、古い建物はこの「本堂」だけといってもよい。「本堂」は桃山時代の建築様式を伝えている建物であり、重要文化財に指定されている。

 本堂横を北側に下りると朱塗りも鮮やかな「三重塔」が間近に、その奥に「那智大滝」が見える(左の写真)。

 この「三重塔」は昭和47年(1972年)に再建されたといわれている通り、見た目にも新しい建物である。その内部には飛滝権現本地千手観音が安置されており、内部の壁面には彩色の金剛諸界仏、観音、不動明王などの壁画が描かれている。ただ、建物が新しいだけに、壁画も新しい。

 塔の二、三階は展望所になっている。寺の人から、「特に二階は那智大滝の展望場所として最適です」と教えてくれた。

「那智大滝」(左の写真)はその落差133mといわれており、さすがに雄大である。写真でもわかるように、滝口が三筋になっているが、これが那智の滝の特徴とされている。

 三重塔の近くに「滝宝殿」が建っており、ここには重要文化財に指定されている「銅造大日如来立像」や「銅造観音菩薩立像」など、その他寺宝が保管展示されているようであるが、常時公開されてはいないようである。

 青岸渡寺の本堂の西南側に隣接して「熊野那智大社」が建っている。

 全国に約4000社あるといわれている熊野神社の本社であり、熊野本宮大社、熊野速玉大社と共に熊野三山と呼ばれ、かつては、「蟻の熊野詣」として全国から多くの参拝者がこの地を訪れたことはよく知られている。

世界遺産に登録:

 2004年7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録された。上述の「青岸渡寺」、「熊野那智大社」はこの世界遺産の中に含まれている。熊野那智大社や青岸渡寺の信仰の原点である「那智大滝」は自然信仰の重要な構成要素になっている。

御詠歌
補陀洛(ふだらく)や岸うつ波は三熊野(みくまの)の那智のお山にひびく滝津瀬